レンズシャッターとフォーカルプレーンシャッターの違いとは

レンズシャッターとフォーカルプレーンシャッターの仕組み

デジタル一眼レフの下位機種では、1/4000秒までしかシャッタースピードが使えない機種があります。1/4000秒でも、多くのコンデジに比べれば十分に高速シャッタースピードです。コンデジのオート機では1/1600秒までしかない機種も多く、高級コンパクトや、ネオ一眼と呼ばれるコンデジでは、1/4000秒のシャッタースピードが使えます。

1/4000秒のコンデジと下位機種の一眼レフの高速シャッタースピードが同等に思えますが、コンデジはレンズシャッターなので、そのカメラの最高シャッター速度が使える時の制限があります。一眼レフはメカニカルシャッターのフォーカルプレーンシャッターなので、最高シャッター速度をコンデジより自由に使えるのも大きな利点です。

レンズシャッターはレンズにシャッターを組み込んで小型化できるので、レンズ一体型のコンデジに採用されています。レンズの絞り値の開放側で高速シャッタースピードが使えないのが、レンズシャッターの弱点です。フォーカルプレーンシャッターは、focal(焦点の)plane(面)の焦点面のシャッターのことです。撮像素子(銀塩カメラではフィルム)の前面にあるシャッターのことで、レンズ交換式の一眼に採用されています。

フォーカルプレーンシャッターは物理的な先幕(さきまく)と後幕(あとまく)がセンサー前面にあって、先幕が先に走って、その後から走る後幕との時間差が露光時間でシャッター速度になります。シャッター幕が走行している時間ではなく、先幕と後幕との時間差のことです。縦に走る先幕と後幕の2枚のシャッター幕で作られる隙間(スリット)の大きさが露出時間を決めます。隙間が大きくなると光が当たる時間が長くなって、隙間が小さくなると光が当たる時間が短くなります。

そして、その隙間から撮像素子(フィルム)に当たる光量で、シャッタースピードが違ってきます。フォーカルプレーンシャッターは開放F値での高速シャッタースピードが実現できますが、コンデジのような小型化に弱い欠点があります。

シャッタースピードを離れると、レンズシャッターのほうが優れているところもあります。レンズシャッターはシャッター音が静かなので、静音撮影に向きます。フォーカルプレーンシャッターはシャッター音が響くので静かな演奏会などはもちろん、店内での料理撮影時などでもシャッター音が響きます。フォーカルプレーンシャッターよりレンズシャッターのほうが振動がなく、手ブレに強いです。

フラッシュのストロボ使用を前提にするなら、シャッタースピードの利点が正反対になります。レンズシャッターでは、日中のストロボ撮影の日中シンクロ時にも高速のシャッタースピードの高速シンクロが使える利点もあります。フォーカルプレーンシャッターは高速シャッターでは先幕が開き切る前に後幕がすぐに開き始めるので、フラッシュの同調速度以上にすると黒い帯の幕のスリットでケラレて、黒つぶれで写ってしまいます。フォーカルプレーンシャッターで日中にフラッシュを使ってシャッタースピードを稼ぎたい場合はFP発光がありますが、連続発光になるので光量が弱くなる欠点があります。

一眼レフが動く被写体に強いと言われるのは、フォーカルプレーンシャッターを搭載しているので、レンズの開放側でも高速シャッタースピードが使えることがあります。レンズの絞り値、シャッタースピード、ISO感度がデジカメ時代の露出の3大パラメーターです。シャッタースピードは、写真表現の幅を広げてくれるものです。デジタル一眼レフの最上位機では、レンズの開放F値でも1/8000秒のシャッタースピードが切れます。

2003年にミノルタから発売されたDiMAGE A1は、レンズ一体型機でしたが、1/16000秒が使えました。2000年にオリンパスから発売されたレンズ一体型のCAMEDIA E-100RSは、1/10000秒でした。高級コンパクトではなく、それより低価格で実売1万円台のコンデジでも、1/3200秒のシャッタースピードが切れる機種もあります。

ですが、レンズシャッターのレンズ一体型では最高速度のシャッタースピードが使える時の制限があるので、そのカメラの仕様だけを見てシャッタースピードを判断して買うと困る状況にもなります。実際にそのカメラを使ってみると、最高シャッター速度が使えないことで悩んでしまうかもしれません。

レンズシャッターのコンデジでは開放F値ではそのカメラの最速のシャッタースピードが使えないので、レンズを絞らないと最速シャッターが使えません。レンズ一体型機では、例外もありますが、開放F値での最高シャッタースピードは1/2000秒が限界です。動く被写体を迫力ある姿で写し止めた写真を撮りたいのなら、一眼レフを使うことをお薦めします。

1/4000秒以上のシャッタースピードがあると便利なのは、どんな時でしょうか。日中に明るいレンズで絞り開放で撮りたい時に、1/4000秒以上が適正露出になるとします。こうなると、レンズの絞り開放ではシャッターが切れません。露光値のEV(Exposure Value)では、日中の晴天時の屋外ではISO100で約14EVです。F1.4のレンズのISO100でEV14のシャッタースピードは、1/8000秒が必要です。

F1.4やもっと明るいF1.2のレンズでは、ISO100でも晴天時の屋外では開放F値でのボケ味表現ができないのです。その時には、レンズの絞り値を絞らないといけません。それでも、NDフィルターがあればレンズの絞り開放でも1/4000秒で対応できます。

本当に問題になるのは、NDフィルターでは対応できない時です。NDフィルターは、そのシャッタースピードでは対応できない時に、そのシャッタースピード内で使えるようにするフィルターのことです。NDフィルターは、シャッタースピードを遅くするために使うものです。

1/4000秒以下までしかない機種では、例えば、勢いよく流れる水の流れを鮮明に写し止めたい時にはうまく対応できないこともあります。川の水の流れを写しとめて、その川の流れの一瞬の迫力ある表情を写真に収めたい時には、1/4000秒以上のシャッタースピードが欲しくなります。

この時に、1/4000秒までしかない機種ではどうすることもできません。その機種の最高速の1/4000秒で写真を撮って、満足するしかなくなります。どの一眼レフにするかを考える時に、高速シャッタースピードが必要な写真を多く撮りたいと思っているのなら、1/4000秒以上のシャッタースピードがある一眼レフを選ぶようにすると、後で高速シャッタースピードが使えないことで悩むことがなくなります。

撮像素子にシャッター機能を持たせた電子シャッターでは、1/16000秒以上の高速シャッタースピードも使えます。ただし、電子シャッターは、メカシャッターでのシャッター幕の移動時間の幕速に相当するセンサーの読み出し速度が遅い欠点があります。そのため、動体撮影では被写体の速度に追い付かず、被写体が歪むことがあるローリングシャッター現象の問題があります。

これを防ぐために、電子シャッターでも、センサーの読み出し速度を上げて動体歪みを抑えるためのアンチディストーションシャッターがありますが、メカシャッターでの動体撮影の速度の安定感に比べると劣ります。シャッターはレンズ側とボディ側のどちらにあるかで分けられて、レンズシャッターはボディ側にシャッターはなく、フォーカルプレーンシャッターと電子シャッターはレンズ側にシャッターがないと大きく分けることもできます。

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