バーチャルリアリティ(VR)の仮想現実と写真の未来

バーチャルリアリティと写真の未来

VRのバーチャルリアリティは、この世界に何をもたらすのか、そして、それが写真をどう変えていくのかを関連することを交えて書いています。

バーチャルリアリティとは、物理的にはそこには存在しないのに、五感の感覚で本物と同じと思うほどの本質を感じさせる技術のこと。現実には存在しないのに、人間が体感できるように表現しようとする技術のこと。

シミュレーター

バーチャルリアリティは仮想現実感、人工現実感とも言われて、分かりやすいのが自動車学校での教習時のシミュレーターです。特に、二輪車は四輪の自動車よりも危険なので、実際の路面とは違った仮想空間で特に危険な体験を予めしておきます。仮想空間につながった現実の教習所にある二輪車のアクセルで運転しながら、横をトラックが通ると、実際に乗ってる二輪車が振動するのです。

これをVRでやる意味は、現実の道路でしたら危険だからです。この自動車教習でのシミュレーターを考えても、VRの発想自体は何も新しくなく以前からあったものです。1968年にユタ大学でヘッド・マウンテッド・ディスプレーが開発されて、バーチャルリアリティと呼ばれるようになったのは1980年代末からと言われています。以下に続きます。


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テレイグジスタンス

VRが写真業界に影響をもたらすのは、テレイグジスタンスです。遠隔地にいるのに、まるでそこに現実にいるかのように五感で感じるのがテレイグジスタンスです。海外の有名観光地に設置されたロボットを自宅で遠隔操作して、その観光地を五感で感じながら撮影ができます。VRはあくまで自分で操作しないといけません。

現実的には設置できるロボットには限りがあるので、予約で埋まって使えない問題も起きます。VRでロボットで遠隔地の撮影をその場にいるかのようにできるようになっても、写真愛好家ならVRより現地での撮影を選ぶ撮影者が大半だと思います。ただし、危険な崖などの危険な撮影地での撮影ではVRでの遠隔ロボット撮影になるかもしれませんが、VRは撮影者が五感で見紛うほど感じるので、VRでも疲れや暑さや眠気や痛みなども本物と類似したかのように感じてしまいます。

VR以前でも定点撮影や遠隔地撮影はできるわけで、VR遠隔ロボットは現地に行けない障害者や高齢者や、旅行でそこに行くことが目的なならば使える手段です。撮影時の疲れなどもなくしたいのなら、五感で感じるVR遠隔ロボットではなく、人間から切り離された人工知能ロボットに撮影を頼むことにるので、VR遠隔ロボットは写真撮影においてはそれほど大きな出来事でもないです。

VRで変わる職業写真家

バーチャルリアリティで変わるのは、職業写真家の姿です。仮想現実の中での写真講習では実際にカメラの操作も実感しているかのようになって、写真家の撮影手法が記録されてそれをVRの中で披露することになります。職業写真家は、今までよりVRによって写真講習の幅が増えるわけで、収入を増やすこともできます。実際に写真家の講習を受けるには遠すぎ行けなかった人たちが、VR写真講習では自宅から受けることができます。

写真展も変わります。屋久島の風景写真の写真展なら、それぞれの写真に屋久島の風景を配置して、まるで屋久島にいるかのように五感で感じられる仮想現実の世界を展開したVR写真展ができます。それに、VRが広がると、オンラインでのVR写真展も広がりを見せると思います。

VR写真講習などによって、今までよりもさらに写真愛好家と職業写真家の境界線が曖昧になると思います。フィルムからデジカメになって、さらにVRが出てくることによるその境界線の曖昧さが出てくるのが、写真業界にとっての大きな出来事になります。しかし、写真業界にとってのVRの出現は、人工知能の衝撃に比べれば大したことではないです。

仮想現実は人に備わっているもの

ミラーレス一眼でのEVFは現実を映し出しても、現実ではない虚像です。現実そのものの光学ファインダーとは異なるし、液晶モニターでの撮影や確認が常態化している撮影者の視点から見れば、VRでの仮想現実は想定の範囲内ではないでしょうか。今までの思想的に見ても、ポストモダンがあります。ポストモダンで言われてきたのは、現実と記号の関係が逆転して、現実世界そのものが記号化されたことです。

VRで言われていることにそっくりです。その後のインターネットでも仮想現実が大量にあって、そのネット上の仮想現実が現実と逆転した関係になっていることもかなり言われてきました。オンラインゲームのネット廃人の問題などがそうです。歴史ある伝統芸術の小説や舞台や演劇、絵画などでも仮想現実の中に人は生きてきたのです。絵画で描かれてきた神話は神話であるのに、そこへの自分自身の投入することは、他の伝統芸術でも起こってきたことです。

宗教を出せば、仮想現実で生きてきたのが人類史だとも言えます。バーチャルリアリティは、人に備わっている仮想空間の住人の性格をもっと突き詰めたもので、技術的には優れていても、発想自体は伝統的な人類史の発想の枠内です。写真もドイツのベンヤミン(1892-1940)の「複製芸術時代の芸術作品」という写真論で特に有名な複製芸術論から、オリジナルとコピーの差異の消失が言われてきました。

ベンヤミンから考える

ベンヤミンの複製芸術論は、ごく簡単に単純化すると、写真や映画などの複製芸術時代においては、絵画や彫刻などの一回限りの礼拝的価値のアウラがなく、展示的価値の複製芸術になったことです。アウラはオーラと言い換えれば分かりやすいですが、ベンヤミンの複製芸術論に言及時はアウラと言います。VRが言われるよりかなり前に、VRと同じ映像表現である写真はコピーの氾濫によって、そのコピー写真が現実を凌駕し構築していくと言われましたが、これはフィルム時代のことです。

デジタル時代になっても、無限にコピーできる1枚の写真でも現実の力を持つのは、特にデジタルネイティブ世代以後に顕著です。それは、デジタル写真が当たり前になった世界に住んでいるからです。手紙の歴史が非常に長く続いた以後に電話が突然出てきて、手紙のオーラなき複製電話時代には、もはや現実の手書きは意味がないとはなりませんでした。それは、電話時代が当たり前になったからです。

写真の来た道とVRが行く道

写真という1秒にも全く満たない高速なごく一瞬の切り取りの写真のコピーが氾濫する時代でも、現実世界は力を持っています。バーチャルリアリティで写真のことを考えるのは、VRで仮想現実が力を持ち現実の力が弱まると言われるのは、写真で言われてきたことと非常に似ているからです。

VRは自分自身の分身を作り上げるものですが、それよりかなり前に写真が自分自身の分身を作り上げ、たった1枚の写真の中に被写体の時間を凍結し永遠に封じ込めたのです。

だからこそ、写真は現実を大きく変えると言われ、時間の概念が変わったと言われたのでした。VRが行く道は、写真が通ってきた道と重なっているのです。それに、VRはカメラができたから生まれたものです。

VRは人の力を補完する側

写真は無限コピーのデジタル時代においても、1枚の写真が現実的な力を持って、それこそオーラを放つ写真もあります。VRという仮想現実がもっと広まる世界になっても、現実世界の力が弱まることを恐れることはないです。VRよりも格段に人類史に大きな衝撃を与える人工知能のことを考えれば、バーチャルリアリティ自体は人間の力を補完する側に働くのでそんなに驚くこともないです。VRは人間の感覚に訴えるもので、人工知能と比べると人間主義です。

VRによって擬似ロケハンができるので、撮影がもっと容易になります。企業側から見ると、VRはカメラ設計での失敗を防ぐことができるので、利益確保のために使われるようになる側面もあります。職人技術の継承が難しいと言われている分野でも、VRならその職人技を追体験して習得できる時間が短くなります。

どれだけスマホ時代と言われても、特に大型センサー機を愛用している写真愛好家はパソコンを使っています。スマホの写真の画質がレンズ交換式より悪く、スマホの画面では被写体の迫力もなくRAW展開にも向きません。VR時代になったからといって、スマホ時代だからとスマホに飛びつかなかった写真愛好家が、VR写真撮影に飛び付いて、これからの時代はVR時代だからVRでの写真撮影を主にするとなるでしょうか。

VRで忘れがちな影響

写真業界にとっての大衝撃になったのはインターネットの出現で、これで写真業界のありようも大幅に変わりました。このウェブによる変革に比べれば、VRの変化はさらに小さいものになると思います。写真業界にとっては、VRよりも犬猫写真家が誕生するまばたきシャッターカメラのほうが衝撃が大きいです。VRはあくまで、写真撮影の主体は人間で撮影者は人間です。これに離れれば離れるほど、写真界にとっての衝撃になります。

VRによって写真業界に影響があることで忘れがちなのが、東京一極集中の問題です。VRによって様々な業界で東京都内に集まる必要性が薄れてくれば、写真業界も東京一極集中が是正され、日本各地に有名写真家が散らばって写真展などもその各地で開かれるようになります。VRが写真界に大きな影響をもたらすのはこの東京一極集中の是正で、写真は現場主義で日本各地の被写体を撮影することが重要なので、本来的には都内に集まる必要はないです。

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